今話題の「セイバーメトリクス」とは?理想的な打順の例から指標、欠点まで解説

用語解説

プロ野球の試合や記事で、セイバーメトリクスという言葉をよく耳にするようになりましたが、どんな意味か知らない方もいるのではないでしょうか。

セイバーメトリクスとは、野球のデータを統計学的に分析する手法のことで、打順を組む際にも用いられます。

しかし、実際にプロ野球の試合で組まれている打順が、セイバーメトリクスに基づいているか判断できないことも多いでしょう。

この記事を読めば、セイバーメトリクスにおける「理想的な打順」がわかります。従来の考え方による「理想的な打順」との比較も紹介するので、参考にしてみてくださいね。

セイバーメトリクスとは?

セイバーメトリクスとは、野球のデータを統計学的に分析する手法のことです。

平たく言うと、野球における様々なデータを使って、選手の能力やチームの強さなどを数値から客観的に分析する、ということです。

アメリカ野球学会の略称SABR (Society for American Baseball Research)が語源となっています。

最近よく聞くようになったセイバーメトリクスという言葉ですが、意外なことに起源は古く、1970年頃から提唱されていました。

セイバーメトリクスが注目されるようになったきっかけは?

セイバーメトリクスが注目を浴びるきっかけは、2000年代のMLB(メジャーリーグ)にありました。

2000年代のオークランド・アスレチックスがセイバーメトリクスを用いて快進撃を起こしたのです。

当時のアスレチックスは、球団の予算が限られ、主力選手の放出や引退もあったため、低迷が続いていました。

そこで、アスレチックスのGM(ゼネラルマネージャー)のビリー・ビーン氏はセイバーメトリクスの導入を試みます。

具体的には、

  • 「勝利するために重要視すべき」と定めた要素を持つ
  • 年俸が安い

という特徴のある選手たちを獲得していきます。

その結果、2001年と2002年にはリーグ最低レベルの年俸総額ながら、2年連続でシーズン100勝を達成しました。

こうして、セイバーメトリクスを用いることは、1勝にかかる金銭的コストを低くし、球団経営における合理的な手段として注目されていったのです。

セイバーメトリクスから考える「理想的な選手」

先ほどのアスレチックスの例で、ビリー・ビーン氏は「勝利するために重要視すべき」要素を持った選手を獲得した、とお話ししました。

では、「勝利するために重要視すべき」要素を持った選手、いわばセイバーメトリクスにおける「理想的な選手」とは具体的にどんな選手なのでしょうか。

従来考えられてきた「理想的な選手」と比較して解説します。

従来の考え方による「理想的な選手」

従来の考え方による「理想的な選手」 を評価する指標として、以下のものを思いつく方が多いのではないでしょうか。

  • 野手 ⇒ 打率、本塁打、打点
  • 投手 ⇒ 防御率、勝利数

従来の考え方では、これらの指標が上位であることが「理想的な選手」とされてきました。

実際、MLBやNPB(日本プロ野球)においては、上記の指標に関するタイトルが存在します。 しかし、従来重視されてきた指標のうち、特に打点や勝利数には指標としての欠点があります。

それは、運や状況など「選手本人の能力」以外の要素に左右されやすいという点です。

例えば、

  • 塁上にランナーがいない状況だと、本塁打以外の安打では打点を記録することができない
  • 味方が無得点だと、無失点でも勝利は記録されない

このように、従来の考え方による「理想的な選手」には「選手本人の能力」以外の要素が絡んでいるため、十分な評価がされているとは言い切れないのです。

セイバーメトリクスによる「理想的な選手」

前提として、セイバーメトリクスにおいては野球を以下のように定義しています。

27個のアウトを取られるまでは終わらない競技

言い換えると、27個のアウトを取られるまでに相手チームより多く得点をすれば勝利できる、ということです。

このことから、セイバーメトリクスにおいては、野手であれば得点期待値を高める選手、投手であれば得点期待値を下げる選手が「理想的な選手」と定めています。

セイバーメトリクスが重要視する指標

セイバーメトリクスにおいて「理想的な選手」と評価する際に、重要視される指標は次の表のようになっています。

運や状況により変動せず、「選手本人の能力」のみが反映される点に特徴があります。

また、これらの指標は得点期待値にポジティブな影響を与えることが期待できます。

セイバーメトリクスから考える「理想的な打順」

セイバーメトリクスにおける「理想的な選手」についてわかったところで、その選手たちをどのような打順で並べることが効果的なのでしょうか。

こちらについても、従来の考え方と比較してご紹介します。

従来の考え方による「理想的な打順」

打順に正解はないとされることが多いですが、次のような並びが「理想的な打順」といわれる傾向にあります。

  • 1番:出塁率が高く足が速い
  • 2番:バントなど小技が得意
  • 3番:打率が高い
  • 4番:ホームランバッター
  • 5番:チャンスに強い
  • 6~9番:打力が高い順

従来の「理想的な打順」の例:2018年埼玉西武ライオンズ

例えば、2018年の埼玉西武ライオンズは従来の「理想的な打順」の典型といえるでしょう。

以下は2018年ライオンズで最も多く組まれた打順です。

赤字のデータに注目すると、従来の「理想的な打順」の特徴に合致していることがわかります。

セイバーメトリクスによる「理想的な打順」

セイバーメトリクスにおける「理想的な打順」は以下のようなイメージで考えます。

(出典はこちら

以上からわかることを簡単にまとめると、このようになります。

  • 最も良い選手を1番、2番、4番に配置する。その中で出塁率が高い選手を1番、2番に、長打率の高い選手を4番にする。
  • 次に良い選手は3番、5番とする。3番は2アウトで打順が回ることがおおいので、1番、2番、4番より重要度が下がる。
  • 残りの選手を打力が高い順に6~9番に並べる。 3番より4番が重要な点に注意しつつ、基本的には良い選手から順番に並べるという考え方といえます。

セイバーメトリクスの「理想的な打順」の例:2021年横浜DeNAベイスターズ

セイバーメトリクスにおける「理想的な打順」が実際に組まれたケースを見てみましょう。

2021年の横浜DeNAベイスターズが9月29日(木)に組んだ打順は次の通りでした。

(注)成績は2021年終了時のもの

セイバーメトリクスで重要視される出塁率や長打率が高い選手たちが1番~4番に配置され、残りの選手が打力の高い順になっていることがわかります。

また、従来の考え方による「理想的な打順」では2番打者のバント数が多い傾向にありましたが、この日の2番を務めた佐野選手はシーズンを通してバントがゼロでした。

この日のベイスターズは3回までに6得点をあげる猛攻を見せており、セイバーメトリクスによる「理想的な打順」が効果的に機能した試合でした。

セイバーメトリクスにおける代表的な指標

セイバーメトリクスによる分析においては、すでに紹介した指標以外にあまり聞き慣れない指標を用いることもあります。

ここでは、一般的にはなじみがないものの、セイバーメトリクスでは重要視される代表的な指標を3つ紹介します。

OPS

OPSは打者を評価する指標の一つです。

OPS=出塁率+長打率 と計算されます。

セイバーメトリクスでは出塁率と長打率が重視されることを先ほど触れましたが、OPSはこの2つの指標を足し合わせることで打者を評価しています。

OPSが高い打者ほど、「得点能力が高い」ということができます。

QS

QSは投手を評価する指標の一つです。

先発投手が6イニング以上投げ、かつ3自責点以内に抑えた時にカウントされます。

QSの数が多い投手ほど、「安定して試合を作る」と評価できます。

WAR

WARは投手と野手を共通して評価する指標の一つです。

そのポジションの代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたかを測ることができます。

平たく言うと、控え選手と比べてどれだけ勝利に貢献できたかを表す指標です。

WARの数値が大きい選手ほど、「チームに多くの勝利をもたらすことができる」と考えることができます。

セイバーメトリクスの欠点

選手の成績を統計学的に分析する手法としてセイバーメトリクスを紹介してきました。

優秀な分析手法ですが、欠点がないとは言い切れません。

例えば、以下のようにセイバーメトリクスに基づいた打順に変更したことにより、本来のバッティングができなくなるケースが考えられます。

つまり、選手がセイバーメトリクスによる戦術をよく理解していないと、マイナスに働く可能性があるのです。

解決策としては、選手本人が「従来の2番像」を捨て、「セイバーメトリクスの2番像」を実践できるようマインドチェンジする必要があります。

もしも、過去のチームがセイバーメトリクスを使って打順を組んだら?(2005年広島東洋カープの例を考える)

もしも、過去のチームがセイバーメトリクスを使って打順を組んだらどのような違いがあるのでしょうか。

チーム打率と総ホームラン数で2位を記録しながら、総得点では5位で、最下位に沈んだ2005年の広島東洋カープを例に考えてみましょう。

実際にシーズン最多の17回組まれた打順と、セイバーメトリクスにおける「理想的な打順」を比べると、1番~5番が総入れ替えという結果となりました。

前田智徳選手が1番に配置される点は野球ファンからするとかなり違和感がありますが、セイバーメトリクスにおける「理想的な打順」に近いのではないでしょうか。

このサイトでは、「もしも、過去のチームがセイバーメトリクスを使って打順を組んだら?」というテーマで、他の年代やチームについても紹介する予定です。

興味のある方はぜひご覧ください。

まとめ

セイバーメトリクスの基礎から、従来の考え方と比べた「理想的な選手」や「理想的な打順」、指標などを解説してきました。

欠点がないとは言い切れませんが、データ分析が盛んになっている時代なので、今後セイバーメトリクスを前面に押し出したチームが増えてくかもしれません。

セイバーメトリクスの考え方を知ることで、あなたの野球を観る楽しみが新たに増えれば嬉しいです。

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